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聖マリ抄読会第4回目 “Ferritin triggers neutrophil extracellular trap-mediated cytokine storm through Msr1 contributing to adult-onset Still’s disease pathogenesis” 毛利
お知らせ
当科では日々の臨床・研究レベルの向上のために抄読会を実施しています!
本日は小児リウマチの専門で、現在は当院の難病治療研究センターで基礎研究をされている毛利先生に、フェリチンと炎症との興味深い関係について、Nature communicationで最近publishされた論文を扱ってもらいました。ご本人のコメントつきでご紹介します。
<本論文の結論>
フェリチンはMsr1を介したNETs放出を誘導し、肝および全身性炎症を惹起する
<背景>
高フェリチン血症は成人発症Still病や血球貪食症候群など重症の炎症病態の特徴の一つですが、フェリチンの炎症における役割はこれまで明らかにされていませんでした。
既報のまとめは以下の通りです。
- AOSDの患者血清中ではNET-DNA複合体が上昇していた
- AOSDのNET-DNA複合体はマクロファージを活性化し, IL-1β, IL-6, TNF-α発現を増強させた
- スカベンジャーレセプターの一つであるMSR1はFerritinのL鎖、H鎖を認識した
- Msr1欠損マウスでは野生型マウスに比してNETosisが抑制された
- マウス肝炎ウイルスによる劇症肝炎における好中球エラスターゼ、C5aを介した炎症はMsr1欠損マウスでは抑制された
以上より筆者らは、『Msr1はフェリチン-好中球間の相互作用に関連している』という仮説をたて、野生型マウスおよびMsr欠損マウス、ヒトAOSD患者の検体を用いて、フェリチンはMsr1依存性に好中球からのNETs放出を促し、肝および全身性炎症を惹起することを示しました。
<感想>
- Msr1の阻害薬がAOSDの治療薬の一つになる可能性があり、楽しみです。
- 2次性HLHモデルマウスにMsr1阻害薬を用いると、HLHの病態が改善されるのか、興味があります。
- 本研究では、AOSD検体の好中球でのMsr1発現は上昇は示せたものの、培養上清中のNETsマーカーに差が示せていなかったので、今後の研究報告に期待したいと思います。